自分の経験と東京電力パワーグリッドが培ってきた技術力を駆使して
世界のエネルギー政策に貢献できる喜び

2016/08/04

安全に電気を使えることは当たり前──日本にいれば、誰もが当然のようにそう思う。しかし、海外、とりわけ発展途上国にあっては、いまなお電気の供給が不安定な国や地域は多い。日本の安定した電力供給の信頼感は、東京電力パワーグリッドがこれまで培ってきた実績の賜物。その経験や技術力は、現在、海外においても活用され、多くの成果をあげている。

東京電力パワーグリッド株式会社 配電部 技術調査グループ
吉村和紘(よしむらかずひろ)

2005年に入社後、埼玉支店川口支社の配電保守グループに配属され、電線などの配電設備の補修業務を行う。2006年4月、同支社内の設備サービスグループに異動し、配電設備の設計業務を担当。その後、本社配電部に異動。業務システムグループを経て、配電管理グループに在籍し、各地の配電設備の設計を総括する業務を担う。2013年より現職。

これまでに培った東京電力パワーグリッドの技術力を海外でも活用し、
"電気を安全に安定してお届けすること"が使命。

発展途上国を中心に、海外でも東京電力パワーグリッドの配電技術が活用されているのをご存知だろうか。過去20年で約30カ国に配電網整備などの技術支援を行っている。特に、ブータンでは、地中ケーブルの故障箇所をピンポイントで特定する技術が現地電力会社から高い評価を獲得している。その海外コンサルティング業務を担うのが、吉村和紘さんが在籍する配電部技術調査グループだ。

現在、吉村さんは、THEパワーグリッドソリューション(株)が国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より受託している「インド共和国(印国)におけるスマートグリッド分野のキャパシティ・ビルディング事業(普及促進事業)」のチームメンバーとしてインドでの配電計画支援業務に携わり、日本とインドを往復する日々を送っている。その業務はどういったものなのだろうか。

「日本国内で導入実績が多い配電系統計画支援ツール(電気を安定的に送るための最適な配電設備形成を導き出すシステム)と、スマートメーター(リアルタイムに電気使用状況の"見える化"を可能にする電力メーター)導入による電力量データ解析を行いインドの北部、北ハリヤナ配電公社の業務効率改善の実証プロジェクトをサポートしています。当社の業務は、基礎調査から始まり、NEDOが実施している「インド共和国(印国)におけるスマートグリッド関連技術に関わる実証事業」で行われるスマートメーターの導入を経て、その後の実証段階完了まで、およそ5年に及びます。」

インドの配電設備において、「問題は何か」「何が求められているのか」「問題解決のためにどうすればいいのか」など現状を把握するための基礎調査が2014年にスタート。2015年からは、システム設計と機器導入の準備が進んでいる。マニュアルの作成支援や研修計画案策定のため、吉村さんも毎月のようにインドを訪問。調査から見えてきたインドの配電設備の課題とは。

「電気は供給されていますが、不安定で停電も起こります。設備面においても安全が確保できていません。感電事故が多く、あるエリアにおける感電事故の死亡者は年間で数十人から数百人にも上るそうです。配電用の柱上変圧器等は、低い位置に設置され、電線も入り乱れており、日本のように電線が被膜で覆われていません。電気事業者だけでなく一般の方も感電の危険があります。」

「また、インドでは、一部の地域を除いて国や地方政府が電力を供給していますが、電力損失が多い地域では、何らかの理由で損失が1/3にもなることがあります。多くはメーターに細工をされたり、メーターを通さずに電線を引き入れられ、電気が盗まれたりしているわけです。つまり、送った電気に対して、正当な電気料金を国が回収できていないのです。だから、電気を安定して供給できるように改善すること、配電の損失を減らすことが私たちのプロジェクトの最大の目的です。」

仕事風景。街を歩いてメーターチェック。

街を歩き、メーターをチェックしながら、配電状況に異常がないか、動作を確認している。電柱に張られた電線は位置が低く、入り乱れているため、感電事故のリスクが高い。また、メーターの位置が低いため、細工がしやすくなっている。これも盗電の原因のひとつだ。

長期的視野に立ち、安定して電力を供給する──
それを可能にする設計・運用の技術力と実績が最大の強み。

海外の電気事業者を見る機会も多い吉村さんが考える、東京電力パワーグリッドの技術力の強みとは?

「日本では"電気があるのは当たり前"と一般的に思われているし、電気事業者の間にも"電気の供給を止めることは許されない"という意識が浸透しています。私たちはもちろん、メーカーや電気工事店などの方々も、そう思っているでしょう。だからこそ、多くの協力会社や機関と良い連携が取れているのだと思います。」

「さらに私たちには、これまでの経験と実績に基づいた技術力があります。もっとも優れているのは、綿密な調査に基づき、長期運用を前提とした計画立案と設計ではないでしょうか。」

「発展途上国では無造作かつ、無計画に電力網が敷かれていたりします。それは、必要に応じてただ闇雲に増設していったからなんですが、それだと当然、事故の原因にもなるし、ロス(電気を失ってしまうこと)も多くなる。システム面でも、例えばインドでは、IT立国ゆえに最先端のソフトを導入していたりすることもありますが、その前に、まず整えるべきはハード面だろう、と思うこともあります。優れたソフトを導入していても、使いこなせていなければ適正に運用できませんよね。」

「まさに私たちの強みはそこです。長期的に運用できる電力ネットワークを整備できること。そして、ただ作るだけではなく、その後も、ネットワークを安定して安全に運用するシステムとノウハウがあること。"供給信頼度が高い"というのですが、それが東京電力パワーグリッドの最大の強みです。」

壮大な電気事業も地道な実地調査があってこそ。
海外コンサルティング業務の難しさとやりがいとは──

インドにおける配電計画支援は現在どのあたりまで進んでいるのだろうか。

「今後は、実際にシステムを運用する実証段階に移ります。そして、今月(2016年1月)末に再びインドに行きますが、ここで私自身は、図面で設計した電力ネットワークが実際に実現可能かどうかを調査する予定です。」

仕事風景。図面を見ながら設計が実現可能か街を歩いてチェック。

2016年1月の現地調査にて。図面を見ながら、そのネットワークが実際に実現可能かどうか、街を歩いて、調査する。作業中に現地の一般の方々に歓迎され、話しかけられることもしばしば。過去には、現地のローカル新聞に取材を受けたことも。

さまざまな地域や国でコンサルティング業務に携わっている吉村さんにとって、この業務の難しさ、そしてやりがいとは。

「言葉や文化が違う国で、そこの国の人たちと仕事をする難しさがありますね。インドの事業者にとっては当たり前の認識を、変えなければいけないときもあります。例えば、"ときには電気が止まっても仕方ない"と思っている彼らの意識を変えさせなければいけないわけですから。そして生活面では、気候や食生活に慣れるのが難しいということもありますね。」

「一方、とても達成感を感じることもあります。やはり自分たちの技術力を使って、配電の不備やロスを解消できたときが何よりうれしいです。以前、ブータンで仕事をしたときに、あるトラブルがあって、そのときは日本から機器を運び、トラブルの原因を特定し、解消できたことがありました。そういうふうに、成果があげられたときは、本当にやりがいを感じます。」

今後ますます世界中で求められる東京電力パワーグリッドの技術力。

「日本国内はすでに電力ネットワークが整備され、電気の供給も、ほぼ安定して安全に行われています。しかし、世界でもそれはまれなこと。だからこそ東京電力パワーグリッドの技術力を生かした海外コンサルティング業務はますます求められていると思います。実際、インドの支援業務はあと3年続きますが、私自身もチームも、常に数件ずつの案件を抱えている状況です。」

今後さらなる海外事業を展開していく東京電力パワーグリッド。吉村さんの上司も「今後も、海外で活躍できる吉村さんのような人材を育成することは重要だ」と語っている。

現地スタッフと食事風景。

インドといえばやはりカレー! 食事会を通して現地スタッフとのコミュニケーションを深め、信頼関係を築いていくこともプロジェクトを円滑に進めるためには重要だ。

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  • 東京電力パワーグリッド
    海外事業

    今まで国内で蓄積された経営資源や専門的知識・技術を活用し、海外でのビジネスチャンスを模索し、海外での活躍の場を広げています。

  • 東京電力ホールディングス
    海外への事業展開

    国内電気事業で培った専門知識や電力技術を活かし、世界各地域のニーズに応じた投資事業やコンサルティング事業、国際交流をおこなっています。

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