社内外のチームワークで東西の電力融通を実現!
~飛騨信濃直流幹線建設計画~

2021/09/08

社内外のチームワークで東西の電力融通を実現!~飛騨信濃直流幹線建設計画~

現在、異なる周波数の電気を使用している東日本(50Hz)と西日本(60Hz)。東日本大震災発生時には大規模発電所が被災し、東日本地域が電力不足に陥りました。東西の電力融通を行い、不足分の補填に努めたものの、多くの方々の生活に影響を及ぼしました。この経験を踏まえて開始したのが「飛騨信濃直流幹線建設計画」。災害発生時の安定供給のみならず、全国各地で生み出される再生可能エネルギーを日本中に届けられるようになったり、東日本で生み出した電気を西日本で販売するなど、電力市場の活性化につながったりと、さまざまな効果が期待されています。

この計画の主役となる、従来以上に大量の電気を融通し合うための「飛騨信濃周波数変換設備(以下、FC)」「飛騨信濃直流幹線」が2021年3月に、運転を開始。これにより、東西間の連系容量は120万kWから210万kWへ拡大しました
関連設備の建設に携わった東京電力パワーグリッドの2人が、奮闘の日々を振り返りました。

2027年度には300万kWまで増強する計画。

東京電力パワーグリッド
工務部 送変電建設センター
東西連系線岐阜土木グループ

青木 孝

1980年入社。東部送変電建設所に配属となり、以降、茨城や新潟、埼玉、岐阜などさまざまな現場で鉄塔の基礎建設のための調査や工事監理を担当する。
2014年より現職にて本プロジェクトに参加。

青木 孝

東京電力パワーグリッド
工務部 送変電建設センター
交直変換設備グループ

松下 貴洋

2010年入社。東京支店の品川変電保守グループ配属となり、6年間にわたり変電所の保守業務に従事する。2016年より工務部送変電建設センター制御システムグループを経て本プロジェクトに参加。

松下 貴洋

東西間の電力連系容量を大幅に拡張する一大プロジェクト

松下「私は長野県にある東京電力新信濃変電所内に設置する変電システムの構築と、その試験を担当しました。東西の電力融通の仕組みは従来もありましたが、今回はそれを大容量の直流幹線によって拡張するプロジェクト。発電された電気を皆さまにご利用いただける電気の種類へ変換するための各種装置を設置し、まずは新信濃変電所内で正常に作動するか試験を実施。次いで中部電力さまの飛騨変換所とつないだ状態でも正常に作動するか、何度も試験を繰り返しました」

青木「その直流幹線を支える鉄塔の、基礎建設工事を担当したのが私です。今回は現場事務所の立ち上げから携わらせていただき、地点調査、地質調査を経て基礎を設計。工事の監理や、行政手続きも行いました」

今回の拡張により210万キロワットの電力融通が可能に(約70万世帯分の電力に相当)

今回の拡張により210万キロワットの電力融通が可能に(約70万世帯分の電力に相当)

今回の工事概要

今回の工事概要

新信濃変電所に増設した、交流と直流とを変換する「サイリスタバルブ」(高さ8.5m)

新信濃変電所に増設した、交流と直流とを変換する「サイリスタバルブ」(高さ8.5m)
周波数が異なる東西間の電力融通の場合、送る電気を受け側地域の周波数に合わせる必要がある。
そこで、交流をいったん直流に変換して東京電力・中部電力の施設間で送電。受け側施設で再び交流に変換する際に周波数を変え、地域内に送電する仕組み

電力会社間の枠組みを越えた技術力の結集

青木「今回建てた鉄塔は全部で197基。送電線建設工事の規模としては非常に大きなものであり、建設場所が山岳地であることなどを踏まえると、4年という送電線の建設工期は決してゆとりのあるものではありませんでした。
心に留めていたのは、『安全を確保しつつ、いかにスムーズに工事を進めていくか』ということ。検討を重ね、地形・地質に応じて基礎を構築する方法を柔軟に選択することで、かなり工期短縮を実現することができました。そして、それを実現できたのも、請負会社を始めとした協力会社の皆さんの高度な技術とご尽力によるものと感謝しています」

鉄塔の土台(基礎)作りのための掘削作業。穴の深さは約10mにもなる

鉄塔の土台(基礎)作りのための掘削作業。穴の深さは約10mにもなる

松下「中部電力さまとの連携は本プロジェクトの要であったといえます。同じ電力事業者とはいえ、設計や施工の仕方、考え方も少しずつ異なっています。実際につないだときに間違いがないかをしっかりと見極め、問題が発生したらすみやかに原因を特定して調整を行う必要がありました。特に、大詰めとなる2020年10月から2021年3月にかけての系統連系試験期間には、全国規模で電力需給がひっ迫し、それに対応するため試験を一時中断せざるを得ませんでした。これによりスケジュールが後ろ倒しになり、目前に迫った運転開始に間に合わせるために中部電力さまとともに何度も工程を練り直す必要がありました」

青木「会社間の枠組みを越えた連携があったから、無事運転を開始させることができたと感じています。私としても、他の電力事業者さまのエリアに鉄塔を建てるという得がたい経験ができました。送電線担当者からは、中部電力さまの施設である飛騨変換所から送電線を引き出すにあたって入念な打ち合わせを行ったと聞いています」

電力会社間の枠組みを越えた技術力の結集

東日本大震災の教訓を胸に、未来へ繋ぐもの

青木「私は、東日本大震災の直後に千葉カスタマーセンターへ応援に行ったときの経験が原動力になっていたように思います。計画停電についての情報を窓口担当者らへ共有することが私の役割でしたが、ご迷惑をおかけしてしまっているお客さまから電話越しに厳しい言葉をいただき、ときには涙を流しながら応対にあたっている担当者の顔が非常に印象に残っていて、今回このプロジェクトに着任するにあたって、そのときのことを改めて思い出しました。東西の電気をよりスムーズに融通できるようになれば、万が一の事態においても計画停電を回避できるかもしれない。
お客さまにご迷惑をおかけすることも、それによって窓口担当者が辛い思いをすることもなくなるかもしれない─そんな思いを胸に抱きながら取り組みました」

松下「今回、大きな仕事を成し遂げる上で、チームワークの大切さを痛感しました。力を合わせることで、一人では、あるいは一社では解決できない問題も乗り越えていくことができる。今後のプロジェクトにおいても、それを意識しながら取り組んでいきたいです」

青木「現場を一つ終えると、必ず何かしらの学びがあるものです。私は、プロジェクトから得てきた知見やノウハウを後進に伝えていくことに力を入れていきたいと思っています。将来の東京電力グループに貢献する人材を、一人でも多く育てていく。今回の経験も『教材』としていきたいと考えています」

山岳部では人力で鉄塔間に電線を張ることは難しいためヘリコプターで行う

山岳部では人力で鉄塔間に電線を張ることは難しいためヘリコプターで行う

【関連リンク】
本工事の様子はYouTubeでもご覧いただけます
https://www.youtube.com/watch?v=f2nPR5q9xtw

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